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～第二部⑥～ 春奈ちゃんと僕と赤の女神
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2025-08-02 21:09:42春奈ちゃんと手をつなぎ、赤の森の前に立っていた。
「さあ、帰ろう」
春奈ちゃんは高校のブレザーの制服を着ていた。
ロングの黒髪はいつ見てもキラキラで美しかった。
優しい目が心配そうに僕のこと見てる。
膝上のスカートからのぞく膝小僧がキラキラ輝いてる。
黒のハイソックスがスラリとした脚にピッタリ合う。
細くて長い指で、僕の右手をしっかり握った。
「小さいときからずっとね。わたしが悠ちゃんのこと、守ってきた。だからね。ぜったい離れちゃいけな
いんだよ。言うこと聞かないのはダメだよ」
ちょっとこわい顔したけど、すぐニコニコ笑った。
「春奈ちゃん。ごめんなさい」
「また春奈ちゃん！春奈姉さんでしょ」
春奈ちゃんったら握った僕の手に力を入れる。
「ごめんなさい。お姉ちゃん」
春奈ちゃんが嬉しそうに笑い、楽しそうに僕の手握って足速に歩き出す。
「待ってよ。お姉ちゃん」
ふたりで歩いていく。
ふたりで歩けば、なにもこわくなんかないはずだった。
だけど……。
後頭部にものすごいショック。
目から火花。
「春奈姉ちゃん！」
頭がボンヤリしながら大好きな春奈ちゃんの名前を呼ぶ。
けれども、いつも一緒にいる春奈ちゃんがいなかった。
僕、ひとりだけだった。
壁にもたれて椅子に座っていた。もちろん縛られている。
よく見ればもうひとりいた。
春奈ちゃんじゃない。
一緒にいて欲しくない人間。
目の前には、赤い杖を握った赤の女神の姿があった。
頭の後ろが割れるように痛い。
血が流れている感触。
すごく気持ち悪い。
赤い杖が僕に突きつけられた。
杖の先端は、口を開けて舌を出した蛇の頭。
口から血が流れ落ちている。
「お前は失神した後、夢を見て笑っていた。『はるな』というのは人の名前か？」
マハー・カミラさんの声って、まるでナイフのように研ぎ澄まされてる。
「残念だな」
全身に震えがきた。
「わたしはお前が笑うのは望まない」
赤い杖が振り下ろされた。
頭のてっぺんに激痛。
思わず悲鳴をあげていた。
マハー・カミラさんは黙っていた。
黙ったまま、杖を旋回させた。
たったひとりの僕の前に、春奈ちゃんと僕のふたりが現れた。
学校の制服着て、コーンのアイスクリーム手に並んでいた。
ふたりともニコニコと幸せそうな表情だった。
そうなんだ。
僕って幸せだったんだ。
大切な家族は失ったけれど、春奈ちゃんと一緒だったから。
僕は春奈ちゃんの肩に頭を寄せている。
家族を失ってから、それがかけがえのない時間になった。
「お前から没収したスマホの最初の画面に入っていた」
マハー・カミラさんの声って、不気味なほど静かだった。
杖をまた一振り。
幸せな春奈ちゃんと僕の姿が消えた。
鼻から血が流れ、口に入っていく。
「お前といるのが春奈だな。説明してみよ。この女の正体だ」
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